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31 Jan 2015

トマス・モーリー 「こおろぎ」&「風車」

ルネサンス期のイギリスの作曲家、トマス・モーリー Thomas Morley (1557-1602年) の作品がYoutubeにてお聞き頂けます。モーリーを存じない方は、シェークスピアの同時代人というとピンと来るかもしれません。








Il Grillo「こおろぎ」、La Girandola「風車」の両ピースはThe First Booke of Canzonets to Two Voycesに収められているファンタジア。尚、楽譜中には、Girandola?のように疑問符「?」が付加され表記されています。Bookeは、12の歌曲(Canzonets)と9の器楽曲(Fantasia)のレパートリーで構成されています。全て2声の対位法でかかれ、簡素で美しい作品が多く、鍵盤ハーモニカで良い響きがするように思えます。

Il Grilloの録音に使用したのは、両者とも前回の記事で紹介した木製鍵盤ハーモニカ(右・遠山麻友美 / 左・小嵐龍輔)。La Girandolaは今まで使用してきたもの(右・遠山麻友美)と木製鍵盤ハーモニカ(左・小嵐龍輔)。

以下は The First Booke of Canzonets to Two Voycesの前文より引用

Loe heere, most worthy Ladie these Canzonets of mine like two wayting maydes desiring to attend upon you; destinated by my Wife (even beefore they were borne) unto your Ladiships service. Not that for any great good or bewite in them shee thought them worthy of you: but that not being able as heeretofore still to serve you; shee would that these therefore with their presence should make good & suply that hir absence. For hir sake then vouchsafe, gentle Ladie, to entertain them; having no other thing to commend them to you for, but this that they are Virgins, never yet having once been out at standing perhaps in the highest degree they shall not satisfie you: yet if they shal but in any sort content you; I know that the greatest fault you will finde in them shable for their smalnesse. And so good Madame I cease further to trouble: but not still to serve and honor you. 

From London the 17. of November. 1595

Your Ladieships Ever to commanund

Thomas Morley

25 Jan 2015

木製の鍵盤ハーモニカ

2014年の暮れから2015年の初頭にかけて、2年ぶりに実家に戻っていた。故郷はひどい大雪だった。愛知での2つの演奏会を終えた後、父のアトリエで、父と鍵盤ハーモニカの外筐を木材で制作した。鍵盤ハーモニカに木材を使用する事についてはかなり昔から興味はあり、2013年頃にもロンドンで、試しに一度木を貼りあわせて作った事があった。その時は、製材用具もなければ、良い材料も調達するのが難しく、結局殆ど完成しつつも直前で中断してしまった。未だに木材は、ギターは勿論、様々な楽器制作に様々な素材を選択できる現代においても、最も一般的であり、人気がある。市販されている鍵盤ハーモニカの殆どは、耐久性を考慮してABS樹脂で作られているが、その一方で、SUZUKIのPRO-37 V2やHammond 44に見られる木目柄のデザインには、楽器製作者、あるいは演奏者の木材使用に対する憧れが表われているように見える。



今回使用した木材は、偶然アトリエにあったものの中から選んだものだ。木目の数を数えれば100年は経過していることがわかる(楽器作りとはなんと贅沢なのだろう)。おそらく檜だが詳細はよくわからない。香りは強くない。父によれば以前町が水害にあった時に水に浸かったということだから、10年以上はアトリエの中に寝かされていたのだろう。




全てを1から設計する訳ではなく、今回は市販のモデルをベースに外筐のみを制作したが、音を出してみてわかるのは、やはりリードが音質の大部分を決定している——つまり、どのような覆いを作るにかかわらず、基本的な音質の傾向は変わらないという事。それから、木材で作れば良い音がするというような単純な話ではないという事。当たり前だがどのような材を使用するかによるし、構造も大きく影響するだろう。わずかコンマ1ミリの違い、具体的には、空気箱のどの部分がどのように外筐に接触するかによって音質——倍音構成は多様に変化する。不必要な倍音をカットするために別素材も組み合わせて構成する必要もあるだろう。このような事は、同族の楽器コンチェルティーナを見れば明らかで、彼らは良い音を手に入れるために様々な工夫を凝らしている。



構造上の問題、材質の問題など研究課題は沢山残るが、音質的には想像するものに一歩近づいたという感じで、黎明作品として概ね満足している。音質に関しては、複数の人がオルガン(所謂、小学校等で昔使用されていた足踏みオルガン)の音になぞらえるのを耳にした。


音質等に関する詳細は後に記事にする。

—Ryusuke Koarashi

22 Jan 2015

コンドルは飛んで行く」鍵盤ハーモニカ三重奏

「コンドルは飛んでいく」はDaniel Alomía Roblesによって作曲された有名なペルーの歌です。最後のセクションの美しい一時的転調はRaúl Mercadoのバージョンに含まれているアイデアです。

 

 編曲:小嵐龍輔

 演奏者 (London Melodica Club):

Yumiko Shiratori
Ayumi Toyama
Ryusuke Koarashi

手の痺れ

誰にも言っていなかったことだが、実は鍵盤ハーモニカ・遠山は2014年、長期間に渡り左手にひどい痺れがあって、ごく最近になってようやく回復した。同年の暮れには幾つかの演奏をすることが決まっていたので、そこでは、出来るだけ左手に負担がかからない、または負担が長時間連続しないようなレパートリーを作る必要があった。

Pocket Penguin—Duo Penguinistanでは、今まで両手が自由に扱えることを前提にして、レパートリーを設計してきた。2重奏というミニマムな形態で色々な音楽をしていると、要求する音や音数にはどうしても片手では足りない場合があるのである。他の多くの鍵盤ハーモニカ奏者がやっているように観客に見せるために楽器を縦に構える方法もあるが、そのようにせず、見かけを犠牲にして、楽器をピアノのように横に寝かせる構えをしているのは、それが左手の自由な動き、左右の均質さを可能にするからだ。

鍵盤ハーモニカは複音を出すことのできる、ポリフォニックな楽器である。しかし、一方でその独立性には限界がある。2つの音を出せば各音の音量が違うし、片方の鍵盤を離す時には音量が変化してしまう。音数が増えれば息も大量に消費する。このような鍵盤ハーモニカの特性には演奏上、そして特に、編曲上悩まされてきた。複数のパート間の独立性やバランスを損なわないような音を選択し、息をする場所も確保しなければならない。

ところで昨年はロンドンでメンバーを集めて、鍵盤ハーモニカの合奏クラブをはじめた。そこでは、いわば今まで一人でやっていたことを、複数のパートに分けてそれぞれ分担して演奏することができる。分散させることで、一人の時に立ちはだかる技術的限界は軽々と乗り越えられる。勿論編曲の選択肢は増えるし、音の分離も良くなるわけで、いいことずくめという訳である。

このような合奏での経験、そして手の故障を通して、一人で出来る事の限界点や特性がよりはっきりと見えてきたような気がする。皆でできる事は、一人で抱え込まず、皆でする方がよいだろう。

18 Jan 2015

鍵盤ハーモニカ三重奏による「ウィーアー!」

以前書いた記事でも少し触れましたが、2014年の1月からロンドンで鍵盤ハーモニカのアンサンブルをやっています。発足からちょうど一年が経ちました。今回の曲「We Are!」はそのアンサンブルクラブのレパートリーです。アニメ「One Piece」のオープニングソングだった曲ですが、クラブのメンバーのSさんによって提案され、いつものように小嵐龍輔によって3パートに編曲されました。音域が限られていて、倍音が鋭くぶつかりやすい鍵盤ハーモニカにとって、3パートは、響きの豊かさを獲得しながら、テクスチュアの透明性を保つことのできる丁度良い数のように思います。




ウィーアー!

作詞:藤林聖子 作曲:田中公平
編曲:小嵐龍輔

演奏者:
Yumiko Shiratori
Satomi Hori
Ryusuke Koarashi